ゆめうつつの妄想だろうか

不思議な、夢を見た。

燕尾服にシルクハット。
おそらく高齢の男性であろう人が、玄関に立っていた。

「近々、迎えに来るからね。」

そう言った。

自分も何か言っていた気がする。明日にでも!いや、明日は早いか、一ヶ月…いや、やっぱり明日でもいい!……

高揚して、まくしたてるような自分の言葉を遮るように、

「ほんとうは、生き抜いたほうが、いいんだけどねえ…まあ……………では。」

静かにそう言った。


そんな短いやり取りをして、終わった。


迎えに来るんだろうか。

自分の妄想の産物だろうか。

玄関より、もっと奥に来るんだろうか。

横たわる自分の隣まで、近づいてくるのだろうか。

自分が望んでいることなのか。


何故か嬉しくて、待ちわびたことが訪れたように、感じた。

何かの申請が通ったかのように、喜んでいた。

やっと、来たか!やっとか!

何かから解放される
そんな漠然とした喜びが、体から湧き上がるのを感じた。

それはいつだろう。
どのように迎えが来るのだろう。

はっきりと、思い出せるせいで、あるかも分からないのに、何故か期待を寄せてしまう。

そのくっきりとした朧気な何かを、はっきりと信じたい自分がいる。

不思議と、すがりつきたい気持ちだ。


静かで、存在感のはっきりとした、あの男性は、また、自分の元を訪れてくれるのだろうか。

得体のしれないぼんやりとした期待をこめて、今日も、眠ることにしよう。